琴錦は、鋭い出足とスピード感のある相撲で、平成初期の大相撲を沸かせた関脇だった。

最高位は関脇。幕内優勝は2回で、いずれも平幕での優勝だった。さらに殊勲賞7回、敢闘賞3回、技能賞8回、金星8個という実績を残している。三賞受賞18回という数字からも、長く上位で存在感を示した力士だったことが分かる。

特に印象的だったのが、そのスピードだった。

相手に十分な体勢を作らせる前に一気に前へ出る。立ち合いから勝負を決めるまでの速さから、「F1相撲」と呼ばれることもあった。

横綱・大関を相手にしても臆することなく攻める相撲を見せ、8個の金星を獲得。

大きな体格で圧倒するタイプではなく、鋭い出足と技術、そして勝負勘で強豪に立ち向かった力士だった。

琴錦のプロフィール

項目 内容
四股名 琴錦 功宗
本名 松澤 英行
生年月日 1968年6月8日
出身地 群馬県高崎市
身長 176cm
体重 131.5kg
所属部屋 佐渡ヶ嶽部屋
得意技 突き・押し
初土俵 1984年3月場所
新十両 1988年3月場所
新入幕 1989年5月場所
最高位 関脇
引退 2000年9月場所

琴錦の生い立ち

琴錦は1968年、群馬県高崎市に生まれた。

15歳のときに佐渡ヶ嶽部屋へ入門し、1984年3月場所で初土俵を踏んだ。

四股名は「松沢」「琴松沢」を経て「琴錦」となった。

若いころから力士として経験を積み、1988年3月場所で十両に昇進。

翌1989年5月場所には幕内へ昇進した。

幕内に上がってからの琴錦は、持ち味だった速い相撲をさらに磨いていった。

1990年9月場所には新三役となる小結へ昇進。

その後は関脇と小結を行き来しながら、上位陣を脅かす存在になっていった。

琴錦の取り口

琴錦の最大の武器は、鋭い出足と速攻だった。

立ち合いから一気に前へ出て、相手に守る時間を与えない。

日本相撲協会の公式プロフィールでは得意技を「突き・押し」としているが、琴錦の相撲はそれだけではなかった。

相手の懐に入ってもろ差しになり、そのまま一気に寄り切る。

あるいは相手の動きを見ながら、叩き込みなどで勝負を決める。

実際、公式記録でも決まり手は寄り切りが最も多く、次いで叩き込み、押し出しとなっている。

琴錦の相撲で特徴的だったのは、勝負が長引く前に決着をつけることだった。

相手とじっくり組み合ってから力比べをするより、立ち合いから自分の形に持ち込み、勢いのまま勝負を決める。

そのスピード感のある相撲が、琴錦の大きな魅力だった。

琴錦のプロ生活

琴錦は1984年に初土俵を踏み、1988年に十両、1989年に幕内へ昇進した。

1990年代に入ると三役の常連となり、関脇として横綱・大関陣と対戦する機会も増えていった。

そして琴錦を語るうえで欠かせないのが、若貴時代の強豪たちとの対戦だった。

千代の富士、北勝海、貴乃花、若乃花、曙ら、当時の横綱たちを相手に勝利を重ね、8個の金星を獲得している。

1991年9月場所には、平幕の地位で幕内初優勝。

最高位が関脇の力士として、上位陣を相手にしながら頂点に立った。

さらに1998年11月場所には、再び平幕で幕内優勝。

平幕で2度の幕内優勝を果たした最初の力士となった。

三役で安定した成績を残す一方、ケガなどにも苦しみながら現役を続けた。

最終的に2000年9月場所を最後に引退。

15歳で土俵に上がり、32歳まで現役を続けた。

琴錦の成績と実績

琴錦の生涯戦績は663勝557敗58休。

幕内では506勝441敗43休を記録した。

主な実績は以下の通り。

  • 最高位:関脇
  • 幕内優勝:2回
  • 殊勲賞:7回
  • 敢闘賞:3回
  • 技能賞:8回
  • 三賞:18回
  • 金星:8個
  • 幕内在位:66場所
  • 三役在位:34場所

特に三賞18回は琴錦のキャリアを象徴する数字だった。

殊勲賞、敢闘賞、技能賞のすべてを複数回受賞しており、単純に勝ち星を積み重ねただけではなく、強豪を破る力、勢いのある相撲、技術の高さをそれぞれ評価されていた。

2度の幕内優勝も大きな実績だった。

どちらも平幕での優勝で、特に1998年の優勝は、琴錦が30歳になってからのものだった。

琴錦の引退後

2000年9月場所で現役を引退した後は、親方として後進の指導に携わった。

年寄名は琴錦、若松、竹縄、浅香山、荒磯、秀ノ山、中村などを経て、現在は朝日山を名乗っている。

現役時代に培った経験を生かし、力士の指導や相撲界の仕事に携わってきた。

琴錦という力士を振り返る

琴錦は、スピードと出足で勝負を仕掛ける、攻撃的な関脇だった。

176cm、131.5kgという体格は、当時の大型力士と比べれば決して恵まれていたわけではない。

それでも、立ち合いから一気に前へ出る相撲で横綱や大関を破り、8個の金星を獲得した。

そして1991年と1998年には平幕で幕内優勝。

特に平幕で2度優勝したことは、琴錦のキャリアを象徴する記録となった。

三賞18回という実績も含め、琴錦は「安定して勝ち続ける横綱」ではなく、上位陣にとって非常に怖い存在だった力士だった。

速い。

そして、思い切りがいい。

相手が体勢を整える前に勝負を決めてしまう。

そんな琴錦の相撲は、平成初期の大相撲の土俵に独特のスピード感をもたらしていた。

最高位は関脇だったが、横綱・大関を何度も倒し、2度の平幕優勝を成し遂げた琴錦は、平成を代表する「強い関脇」の一人だった。